パンデミック後の新世界を作るために (foussin’s blog)

(『見捨てられた世代』からの提言)

28.投資家はリスクを引き受けるので「r>g」は当然という意見に対して・・・

 経済学者のピケティは「大金持ちに課税して格差是正を図れ」と主張している。当然、金持ちからの反発は大きい。
 よくある反論として挙がるのがリスク分担の話。「r>g」は、リスク分担を考えれば当然の話で、リスクを取って投資した人が、リスクを取らずに働いている人と同じ収益率では、誰も投資しなくなるという反論だ。

 が、これには2つの虚偽がある。1つは、リスクと言っても株式投資は「有限責任」であって、全財産を没収されるほどのリスクは負っていないということ。
 富裕層にとって投資資金は市場から吸い上げた「あぶく銭」に過ぎず、その投資額を全額失っても痛くも痒くもない。個人資産はしっかり確保しているからだ。

 実際、バブル崩壊でもロシア危機でもリ-マン・ショックでも東京電力原発事故でも、自己資本内部留保、株式の時価総額だけでは損害を賄いきれず、結局は公的資金(税金)が投入されている。
 しかし、投資家は豪邸に住み続けたままだ(赤紙が貼られた邸宅に住み続けている人もいる)。むしろ「無限責任」で働いている個人事業者の方が、よっぽど重いリスクを背負っている。

 もう1つの虚偽は、投資家と労働者では、取り得るリスクの質が違うということ。労働者には怪我や死亡事故のように、自身の生命に直結するリスクを、より強く抱えて働いている。実際、米国では「エッセンシャル・ワ-カ-」が新型コロナに感染して亡くなる事案が頻発し、今でも問題になっている。
 金を出している人間の方が偉いという考え方は、資本主義者の勝手な言い分にすぎず、ただの傲慢だ。人は1人では生きてゆけないから社会を作って協力しているのだ。投資家も労働者も、共に社会の恩恵を受けて生活している以上、もっとお互いの利益を尊重すべきである。