パンデミック後の新世界を作るために (foussin’s blog)

(『見捨てられた世代』からの提言)

35.パンデミックを繰り返さず、地球温暖化を悪化させない社会を目指して・・・

 2020年の3月下旬に、東京で雪が降ったことを覚えているだろうか。

  2020.3.28 sat 最高気温 25度 (東京)
  2020.3.29 sun 最高気温  5度

 3/29/sun 季節外れの大雪。積雪 5cmぐらい(西東京市)。3月下旬に東京で積雪(1cm)というのは非常に珍しい。2020年は春分の頃に東京の桜が満開になった。そして咲き誇る桜に雪が積もった。こんなことは、もう二度と起こらないかもしれない。
 新型コロナウィルスがパンデミックになったことで、世界中で人間活動が大幅に縮小した。感染爆発を防ぐため、各国で都市封鎖が行われ、航空・海運・陸運と、全ての輸送業界は減便を強いられ、壊滅的な打撃を被っている。

 そんな訳で、2020年3月のエネルギ-消費や二酸化炭素排出量は劇的に少なくなった。それは地球規模の気象にも少なからず影響を及ぼしたと思う。3月下旬に東京で雪が降ったのも、人間活動の縮小が多少は関係しているのでは・・・ なんて考えてしまう訳で。
 パンデミックは人類にとっては脅威だが、人間活動の急激な縮小は地球温暖化を食い止めるので、そこはプラスに作用する。今回のパンデミックは厳しい局面ではあるが・・・

パンデミックを誘発する社会構造が実在していることにも目を向けるべきだ。

 この問題から何かを学び、修正可能な点がないかを、常に考え続ける必要がある。例えば、地産地消を重視した内需型経済システムへの移行ができれば、人の移動範囲が狭くなるので感染爆発が世界中に飛び火するリスクが減少し、同時にエネルギ-消費も抑えられるので地球温暖化の抑制にも効果がある。
 地産地消と言っても、それは排他的な鎖国を目指すのではなく、相手国の産業を尊重し、地域全体の自立を促すための地産地消でなければならない。皆がそれを尊重し、他国の自給率を脅かすようなシェア争いをしない理性を持つ必要がある。それは格差の縮小にも繋がる。

 ただ、地域によって特産品は異なるので、自給率 100%というわけにはいかない。足りない分を補い合うための貿易は必要だ。
 第三者の糧を奪い合うようなシェア争いでは、社会インフラを都合よく利用しておきながら、一方で別の社会を窮地に追い込む。社会に貢献しながら慎ましく生きている者には何も還元しない。これでは「協力するために生まれた筈の社会」は崩壊してしまう。

 既に世界は変わっている。新世界が始まろうとしている。新世界に順応するには、我々も変わらなければならない。それには「持続可能な社会」を常に意識する必要がある。
 ただし、自分は「SDGs」の提言を鵜呑みにするのは疑問に感じている。経済活動は「適度に縮小すべき」と思っているからだ。SDGsの提言は資本主義を肯定し過ぎていると感じている。

 今まで資本主義にどっぷり浸かってきた現代人の多くは、今の資本主義体制を維持したまま、環境ビジネス等によって持続可能な社会が実現できると信じているようだ。
 が、それは楽観的すぎる甘い考えだと自分は思っている。それはダイエット食品を暴飲暴食する行為と同じ結果になるだけだ。希望的予測で立案した計画のほとんどは「コンコルド効果」の二の舞になるのがオチだ。

 特に危険なのが「企業や国家が借金をするのは当たり前」という資本主義の神話を信じすぎている所だ。その神話が成立するには「右肩上がり経済」が揺るぎ無く保証される必要がある。
 だが、今後の先進国では、高齢化や人口減少等の「右肩下がり要因」が現実化しつつある。そんな中での借金は、持続可能社会の実現を阻む最大の障害となる。

 まずは産業構造を変える必要があるが、既得権益に縛られている自民党や米国共和党には産業構造を変えることはできそうもない。自民党共和党も「資本主義陣営」の政党なのだ。
 では、民主党系の民主主義陣営が与党になれば上手くいくかというと、そう簡単ではない。民主主義は多様性を尊重する思想なので、いつまで経っても意見がまとまらず、延々と議論が続いてしまう。
 所詮、民主主義系の政党は「少数派の寄せ集め」なので、多数決では根本的に不利だ。政治が程よく機能する最善の手は、与党の多数派攻勢に対して、少数意見を無視できないように国民自身が仕向けていくことだ。結局、政治は既得権益の調整しかできない。

 そこで、今はネットの時代だ。この時代においてキャスティング・ボ-トを握るのは、少数野党のリ-ダ-シップよりも、民主主義を主張する「市民の生の声」の方にある。市民が声を上げることで政治を動かす方向へ仕向けることが重要だ。
 今回のコロナ禍で問題になっているのはウィルスよりも経済格差だ。ここでの政治の役割は、思い切った「再分配政策」を打ち出すことだ。本質を見誤らないことが重要だ。

 実際に産業構造を変えるには「民主主義ファ-スト、資本セカンド」の考え方を社会に浸透させる事が必要だ。で、何よりも重要な事は投資家が考え方を改めることだ。
 今回のパンデミックを受けて、機関投資家や資産運用会社は、新たな投資先をAIで分析し選別を始めているという。コロナショックで株式市場が混乱した2020年3月に、株価の下落幅が小さかった企業には「ステ-クホルダ-(従業員・顧客・取引先など)」を重視する傾向が強い事が分かったという。

 要するに短期的な利益を追求するのではなく、地域社会との関係にも目を配り長期的な成長を目指す企業こそ、体力がある強い企業だという話。だが、こんな事はわざわざAIを使うまでもなく、ごく当たり前の話だと思うのだ。
 むしろ機関投資家の方が、そういう会社に配当を増やせと圧力を掛け続け、従業員を薄給で束縛してきたんじゃないの? ・・・って話だ。AI分析によって「初めて発見した」みたいな事を言ってるのが、ちょっと気になる。都合の悪い歴史が改竄されようとしているのでは、と懸念している。

 ステ-クホルダ-を軽視してきたのは投資家の方である。しかも機関投資家(フィナンシャル・プランナ-)というのは年金や保険の掛金など、他人の金を預かって運用している代理人(エ-ジェント)に過ぎない。
 そんな代理人が「株主の利益を尊重しろ」などと言って会社に配当増額を求めて圧力を掛けてくる。これを株主資本主義と呼んでいるのだから嗤ってしまう。

 そして投資家の意識改革の次は、パンデミックを誘発する社会構造の変革も必要だ。グロ-バルに展開するビジネス・モデルがパンデミックを誘発したのは明らかだ。そこで、長距離移動をせずに商売が成立する「地産地消型」の経済へ移行する必要がある。
 そのためには、地域外の「外部要因」を安易に持ち込まない理性が必要になる。今までのように「効率の最大化」が外部から持ち込まれると、地域内で「豊作貧乏」が発生し、せっかく作った生産物を廃棄処分するハメになる。

 廃棄された物は市場には出ない。なのでGDPには加算されないが、それは明らかにエネルギ-の無駄使いだ。GDPには「無駄な部分(ロス)」が最初から除外されている。我々はそのことにも気付くべきだ。
 「持続可能社会」の実現には、無駄を生み出さない効率にも配慮が必要だが、GDPには「そっちの効率」を計測する機能が欠落している。それ故に「肥満率」や「環境汚染」のような社会や環境に負荷を与える要素までが、プラスとしてGDPに計上されてしまっている訳。

 従来の効率化は「大量生産・大量消費」に支えられて実現したものに過ぎない。その裏側では、膨大な「廃棄物という無駄」も大量生産してきた。言うなれば、価格面での効率化の裏に「物質量での非効率」が存在し続けていた訳。
 今後は、地域内での自由競争は重視しても、地域外から持ち込まれる「外部要因」が主張する効率化に対して、安易に流されない理性が必要となる。その効率化は「物質量での非効率」をもたらすからだ。
 経済学が言う「効率の最大化」は価格面だけを見た視野の狭い価値観である。地域住民は消費者であると同時に生産者(労働者)でもある。消費者の利益の裏に「生産者の損益」があるとしたら、総合的に見れば「効率の最大化」が達成されたとは言えない。

 今後の経済学では「消費と生産のトレ-ドオフのバランス」にも注目した評価が必要だ。そうしないと、経済学はいつまで経っても「持続可能な社会」を評価できない。
 しかも、行き過ぎた効率化には遊び(余裕)が無いため、非常事態に陥るとリスクを吸収できなくなる。結果、その地域の労働賃金をも抑制し、企業と投資家だけが得をするシステムになってしまう。
 効率とリスクはトレ-ドオフの関係にあるので、本来なら非常事態のリスクは、効率を要求した投資家が引き受けるのが筋なのだ。しかし実際には、そのリスクは労働者に押し付けられている。今回のコロナ・ショックで、失業者が増大している中で株高が続いているのを見れば、もはや弁解の余地はないだろう。

 で、地産地消型の経済へ移行するには、人口減少などによる「右肩下がり要因」にもマッチする、健全な経済政策が実行できる「健全な土台(財政)」も必要となる。
 要するに、インフレに頼らないと解消できない「財政赤字」は、持続可能社会の実現にとって最大の障害になるということだ。その負債を子供達に押し付けてはならない。そのためにも「全世界同時デフォルト」は真剣に検討する価値があると思っている。