パンデミック後の新世界を作るために (foussin’s blog)

(『見捨てられた世代』からの提言)

コロナ禍で明らかになった『自由貿易・外国資本依存』のリスク

国際分業論によって高騰した小麦や木材を買わされるハメになった(自由貿易のリスク)

 現在、日本で消費される小麦は 9割が輸入品になっている。大豆や木材だって大半が輸入品だ。パンデミックや度重なる異常気象によって、自由貿易はリターンよりもリスクの方が大きくなっている事に気付くべきだ。

 よって、TPP や二国間協定などの自由貿易は抜本的な見直しが必要だ。要するに、国際分業論に基づく自由貿易はハイイールド債(ジャンクボンド)に手を出すようなものである。今や、TPP は『超ハイリスク商品』だと言える。

 で、輸入で高い買い物をするぐらいなら、国内自給率を高めた方がマシだ。つまり内需産業の強化が重要になってくる。しかも、自由貿易には『各国の再分配政策』を効きにくくする弊害があり、格差拡大要因にもなっている。それについては…

26.資源配分・比較優位理論はハイリスク・ハイリタ-ンの典型(自由貿易の罠)

…でも取り上げているので、是非とも読んでほしい。

 国内需要を 100% 国産品で賄うのは無理だとしても、現実に国産小麦が 10% は市場に出回っていて、それはうどん等の安定供給に貢献している。つまり、自給率をもっと高める事は不可能ではないのだ。

 効率の最大化を盲信すると、いざ非常事態のリスクに直面した時、リスク回避の逃げ道を塞がれてしまうのだ。現状では、高い大豆を買わされるために自由貿易に参加させられている。
 要するに、自由貿易協定には『リスク分散』の視点が欠落しているのだ。結局、大国の論理に押し切られ、不平等条約を結ばれてしまった訳。そうなってしまう最大要因は、資本主義に民主的な『理念』が欠落しているためだ。

パンデミック下においても各国が経済を止めないのは『海外資本の圧力』が大きい

 自分は以前、次のような事を書いた。↓


 給付金を配った途端に個人消費を煽るやり方では、いつまで経っても感染は収束しない。給付金は当面の生活を支えるためのものであり、慎重に使うべきである。そうしないと、米国のように『急激なインフレ』になってしまうのだ。

 ところが、実に不謹慎な話だが『急激なインフレ』を小躍りして喜ぶ勢力も存在する。それが投資家だ(特に海外投資家)。要するに彼らの言い分は、こうだ。↓

国民の命なんてどうでもいい。とにかく経済は絶対に止めるな。止めたら投資を引き揚げるぞ

 経済が止まらない限りは株価が下落する可能性は低い。株主は、主に景気動向指数(経済指標)を見ながら株式売買を行う。景気動向指数は実体経済のカルテのようなもの。景気動向指数については、いずれ別の機会で補足説明しようと思っている。

 現状の経済指標はお世辞にも良いとは言えないが、政府による給付金や支援金、さらに個々人の努力により、かろうじて経済は止まらないでいる。すると投資家は、こう思う。

「給付金で潤ってる国民がいるなら、彼らにお金を使ってもらえば、さらに経済は活性化するよね。」…そこで、

「給付金があるんだったら、遠慮せずに使っちゃおうよ。ウェーイ!」

…などと煽り立てる訳。コロナ禍で生産が鈍化してる状況下で需要が爆発すると、当然ながら品不足になりインフレが進行する。実は、物価上昇率(インフレ率)と株価の上昇率は連動する事が分かっている。

 供給が不安定な時に需要を煽れば間違いなくインフレになり、連動して株価も上がり投資家が儲かるという構図だ。つまりパンデミックは、投資家にとって打って付けのボーナス・ステージだったという訳。
 人流を増やす事で再び感染拡大したとしても個人消費が増えるなら、それは株価上昇に繋がるので『投資家にとってはノー・プロブレム』って訳。で、それは外資本の依存度が高い国ほど『投資家に振り回される』…そういうカラクリになっている。

 外国資本の依存度が一番高い国はアメリカである。アメリカは米ドルという『基軸通貨』を武器に、大量のドルを刷って世界中にばら撒いてきた。それが米国でのインフレ経済政策の成功を保証していた。
 ところが、今回のパンデミックではそれが災いした。国民の生活を守るために配った筈の給付金が、すぐに消費拡大のために使われてしまったのだ。個人消費を止められないため人流抑制もままならず、世界最大の感染者数を出してしまったと自分は考えている。

 で、ロックダウンという強硬手段に打って出た国も、実は投資家との駆け引きの末の決断だったのではなかろうか、と自分は想像している。そこまでやらないと、外国投資家の圧力や煽りを抑え込めなかった…と。

 問題は、消費を煽ったとしても、そこに悪意があるかなんて事は立証不可能な所だ。「消費拡大して経済が V字回復するなら、いい事じゃん!?」とか言われてしまえば、それで済んでしまう話だ。
 実際、米国では『フェイク』やら『デマ』が横行し、何が正解なのかが分からない状態にまでなってしまった。思いもよらぬ所から『米国の脆さ』が露呈した。それは『理念を消失した国』の末路である。

 ここで、日本国内の話を思い出してみよう。昨年(2020年)の給付金が「個人消費に貢献しなかった」と文句を言ったのは誰だったっけ? それと『GoToイベント』という個人消費を煽る政策を出してきたのは誰だったっけ?

 冷静になってみれば、GoToイベントとは富裕層への『ボーナスイベント』として用意されたと見るのが一番自然だ。富裕層に便宜を図る事で、翌年の衆院選までには『資本力でマスメディアを丸ごと囲い込もう』としたんじゃないの? ほら、中国とかも米国で似たような事をしてるでしょ。
 GoToイベントを再開するなら、医療が感染をコントロールできる程度まで収束させておかないと、今後も同じ事を繰り返すだろう。

 昨年の給付金のほとんどが預貯金に回されたのは、日本が自給率向上を目指したり、海外資本への依存率を抑えるためには有利に働いたと自分は思った。
 これはパンデミック長期化への懸念がそうさせたのであり、むしろ当然の話。それは当面の利益(国益)に流されず、理念(公益=パブリック)を重視した結果であり、民主国家として誇らしいとさえ思った。

 利害と理念の矛盾を露呈した欧米諸国は、外国資本に踊らされて満身創痍の態を晒した。表面上は V字回復しているが、見苦しい言い訳にしか聞こえない。だが、日本はかろうじて踏みとどまっている。
 日本国民の多くは、利益を餌に囲い込む資本主義政党の政治を、自民党が思っている程には信じていない。敗戦の経験から『調子に乗り過ぎた人間の過信が社会を破滅に追い込む』という事を、既に理解しているのだ。

 民主主義国家としての日本は、欧米諸国よりもずっと手強い…おそらく中国やロシアはそう思った筈だ。国益を優先して理念を曲げる国は信用されない。そういう国は、ただ利用するだけだ。

 で、日本を見ているのは先進国だけではない。民主主義が権力に対して脆弱な事は確かだが、それでも、例えば『弱小・民主連合』を組んで、平和で誠実な交易を望む国は少なくない筈。自虐的な例えで申し訳ないが。
 ビッグマネーに目が眩んだ人間は、いとも簡単に理念を手放す。欧米諸国が V字回復への誘惑に負けた結果が感染者数の増大を招いた。我々はそれを自覚すべきだ。

 今後、持続可能な社会へシフトしていくためには、内需重視型の産業構造へ移行せざるを得ない。資本所得重視のインフレ経済政策は、それを邪魔する要素が強すぎるのだ。
 今、何よりも求められるのは『アメリカファースト』でも『都民ファースト』でもない。『地球ファースト』である。人間は、現状の地球環境が無ければ生きてゆけないのだ。