パンデミック後の新世界を作るために (foussin’s blog)

(『見捨てられた世代』からの提言)

06.産業構造を「地産地消」型へ移行

 今後は、パンデミックへの反省や人口減少社会への適応、地球温暖化防止への対応などによって、新世界は「地産地消」型の経済モデルへシフトするしかないと思われる。石油のような特殊な資源を輸出している国の場合は地産地消という訳には行かないと思うが、それは特殊な例外と言えるだろう。
 産業構造の移行によって誰よりも窮地に立たされるのは、今日まで「インバウンド」を当てにしていた業界だ。仮にインバウンド業界と呼ぼう。インバウンドを経済成長路線の主軸としたのは政府主導で行われていたので、インバウンド業界を救済することは政府与党にとっては義務として果たさなければならない。一応「GoToキャンペ-ン」によってインバウンド業界への救済策を行っているが、一時的な救済しかできないだろう。

 なぜなら、世界の価値観は一変したので、今後の「新世界」でのインバウンドの市場規模は望むべくもないからだ。しかも、省エネ誘因はさらに強まる。コロナ・ショック以前から、既に「飛び恥」とか言って航空業界は縮小を余儀無くされていた・・・。よって、労働人口の大移動が必須となる。
 今まで上手くやっていた多くの大企業も、今後は従来通りの経営が通用しなくなり、雇用縮小に走ると思う。それも、会社が存続可能な規模になるまで縮小が続く。株主・自治体・銀行などは、その会社の適正な規模を今の内に予測しておき、その会社の複製を離れた地方に作れないかを検討してほしい。
 これを「会社のミラ-サイト化」とでも呼ぼうか。このような小規模の会社が地方に分散し、それらがネットワ-クで情報共有されると良いだろう。地元の会社が雇用の受け皿になってくれれば、それは一番望ましいことだ。

 地産地消=地域密着型なので、自治体の役割が重要になる。自治体は銀行と密に連携し、企業よりも株主を誘致した方が地域に密着した企業が育つ気がする。そして各会社は、自分が受け持つ地域外のシェアは奪わない理性を持つ必要がある。
 その理性は社会主義によってではなく、あくまでも民主主義によって成される必要がある。社会主義は「平気で個人を犠牲にする」からだ。人間は、自分(個人)を守るために社会を作り連帯している。その点、社会主義は「本末転倒」な矛盾を孕んでいる。
 そして、各地域が自立可能な自給率を目指すことを尊重し合う。同時にカルテルによる価格支配を常に監視する必要もある。従来の大量生産・大量入荷の効率化によって集客を煽るやり方は、感染リスクを増大させるので、もう使えない。今後は・・・

資本力にものを言わせた無制限の競争にリミッタ-が掛けられたと捉えるべきだ。

 そのような効率化には必ず「地域外の客も呼び込みたい」という下心がある。インバウンドの未練を断ち切る勇気を持たないと、新世界はあなたを歓迎してくれないだろう。究極の効率化によって利益の最大化を目指すと「不測の事態」に対応出来ないリスクがあることを、今回のコロナ騒動は教えてくれた。今後は、適度の余裕・遊びを設けて「ほどほどに稼ぐ」ことが求められる。
 従来の商法をゴリ押しするのは、大衆をガス室に送り込むようなものだと考えよう。せいぜい、安売りセ-ルのために普段より多めに入荷するとか、そのくらいが無難な線だと思う。地産地消型の社会は、そのようにして再構築されていくと自分は予想している。

 ところで、現在の大企業は持株会社(ホ-ルディングス)が本社機能を有し、潤沢な資金を握っている。その本質は中央集権的で、顔の見えない指導部からの指示は、デ-タに基づくものとして絶対的なものとなっている。現場スタッフに拒否権はなく、拒否をすれば「契約不履行」としてペナルティが課せられる。
 上層部と配下の関係は常に一方通行だ。例えばコンビニ本社と雇われ店長の間にはビジネスパ-トナ-としての信頼関係は希薄だ。店が人手不足の時は本社から応援要員が駆け付けるぐらいのことをしないと信頼関係は生まれないものだ。
 「雇われ店長」という形態を取ってリスクを切り離し、正当化しているのも資本主義の身勝手に過ぎない。資本主義者は、民主的な対応が信頼関係を生み出すことを忘れてしまっている。要するに、本部は現場を分かろうとせず、資金力による権力で服従させているだけだ。
 これは社会主義の指導部のやり方と非常に酷似している。行き過ぎた資本主義と社会主義には、意外と類似点が多い。持株会社は戦前の財閥みたいなものだが、多国籍化している上に幹部の顔が見えず、ハッキリ言って財閥よりもタチが悪い。
 これはもう、ジョ-ジ・オ-ウェルの近未来小説「一九八四年」(1949年出版)の管理社会そのままである。小説に登場する最高指導者「ビッグ・ブラザ-」の指示は、現代に置き換えれば、差し詰め「AIの指示」と言えるだろう。
 持株会社の本質は中央集権なので、地域にはあまりお金を落としてくれない。地方に雇用を生み出す会社を建ててくれるか疑問だし、業績が悪いとすぐに撤退してしまう。持株会社を放置するのは、新世界にとって問題がありそうだと感じている。