パンデミック後の新世界を作るために (foussin’s blog)

(『見捨てられた世代』からの提言)

05.全世界で「公開株を一定割合で現金化」し、それを国民投資に充てる

 コロナ・ショックの最中、連日の株高更新のニュ-スを観ていて苛立ちを感じる人も多いのではないだろうか。その有り余るマネ-の何割かは、元々は生活困窮者のために用意された一律給付金であり、各国の政府支出=税金だからだ(マジック・マネ-)。しかも、日銀もETF買いを行い、株価を買い支えていると聞く。
 加熱した資本活動の反動でデフレ不況が起きるのは歴史が証明しているが、金融緩和や財政出動による貨幣量の大幅増加にはハイパ-インフレの懸念もある。インフレによって債務を帳消しにする誘因もどこかに残っているようで不気味だ。
 笑いが止まらない株式市場をよそに、生活困窮者もコロナ感染者数も一向に減らない。医療従事者のドロップアウトも深刻な状況だ。現在の株高は実体経済には何ら貢献していない。

 ならば、実体を伴わない株を現金化し、それを国民給付金に充てれば、生活費を稼ぐために外出せざるを得ない人々も「一定期間の自粛要請」に応じてくれる筈。パンデミックの終息に必要なことは、人の移動を抑え、人々の不特定多数の接触を抑えることなのだから・・・。
 要するに、現在の株高を見て思うのは「投資先を間違えている」ということ。今は、未来の経済活動を復活させるための「命の洗濯」の時間だ。結局、今一番必要なことは「国民への直接投資」である。

 そこで提案したいのは、世界中の公開株を「パンデミック恩赦」で設定した物価引き下げ率に連動して強制値下げする。で、値下げによる損失を「各国の税収」と見なすというアイデアだ。つまり、株価の強制値下げによって、今回限りの「特別な資本課税」を実現する。

 損失といっても物価と連動しているので実質価値は変わらない。株式の実質価値を変えず、尚かつ貨幣量も変えない作戦だ。物価引き下げ率が30%なら、時価総額の30%分が強制的に現金化されたと見なす。
 これはたぶん「国家予算規模の税収」になるはず。この金を使えば、生活困窮者や医療従事者の救済もスム-ズに行われるはず。米国だって、この財源を使えば「国民皆保険」を一気に整備できる筈。日本と米国では、平均株価が 100倍も違うのだから。
 10万円などとケチなことは言わず、一律20万円は給付できるはず。そうすれば、1か月の外出自粛に応じてくれる人も確実に増える。で、前回の特別給付の預貯金口座へ大至急送金すべきだ。

 前回の一律給付金(10万円)では、ほとんどが貯蓄に回り、消費喚起には貢献しなかったという報告がある。が、自分はそれでも構わないと思っている。貯蓄は実体経済の燃料として必ず役立つと思っているからだ。
 それに貯蓄増の背景にあるのは、国民が社会不安の長期化に備えているためだ。インフレ政策への不信が貯蓄増に繋がっていると思うべきだ。つまり政府は、未だ社会不安を払拭できておらず、それは追加の救済策を必要としている事を意味する。
 実際、生活困窮者は今も増え続けていて、彼らは既に給付金を使い果たしている。今守るべきは、金融資産よりも実体経済を支えるリアルな産業(医療・農業・水産・製造・物流・サ-ビス業など)であり、それを支える労働者である。

 自分は財政の専門家ではないので、これを実現する具体案までは分からないが、たぶん取引凍結などの超法規的措置が必要になるんだろうな。株価強制値下げ政策の実施前に暴落が始まるかもしれないが、こういう時こそ投資家はリスクを引き受けてほしい。

 ここまでが、自分が「パンデミック恩赦」と名付けた政策の全容だ。最後の公開株強制値下げのアイデアは特に強力で、財源不足に喘ぐ政府関係者も目の色を変えると思う。現在の株価なら、国民を救済してもオツリが来ると思うので、債務整理にも役立てられる筈。それは巡り巡って、債権者にとっても悪い話ではない。滞っていた実体経済を循環させる効果も期待できる。
 しかも、資本所得から労働所得への再分配がスマ-トに実現され、格差縮小にも貢献する。偏った資本の集中を平らに均す。これを科学的に見るならエントロピ-を増大させる行為といえる。エントロピ-増大は、自然の摂理にも適っている。
 ただ、債権の強制値下げでは貨幣量を減少させるが、公開株の値下げ分は各国の国庫に移動させるだけなので、マネ-ストックに対して物価が安すぎるアンバランスが残る。そのバランスを取るためのインフレ誘因を抑え込む知恵も必要。余った金を公債償還に充てても、富裕層債権者に富が吸収されるだけという皮肉な結果になる。財政赤字が減るだけでも由とすべきなのか・・・。

 ここまでの政策によって、後退した景気を少しは巻き戻せると思う。その間に市民は経済活動を徐々に再開し、日常を取り戻す必要がある。が、パンデミック前と全く同じ日常に戻ることはないだろう。「V字回復」への望みは断ち切るべきだ。
 世界が期待したインバウンドは、もう望めない。あれは一種のバブル・・・ 「インバウンド・バブル」だったのだ。そして、インバウンド・バブルは既に終わっている。