パンデミック後の新世界を作るために (foussin’s blog)

(『見捨てられた世代』からの提言)

11.人口減少は悪いことではないと考えを改めよ(地代が安くなるメリットに注目)

家賃支援給付金 7/14 から申請開始:
対象:新型コロナの影響で2020年 5~12月の間に売り上げが去年の同じ時期に比べてひと月で50%以上減、或いは3か月連続で30%以上減少した事業者。

 個人・法人に関わらず、月々の支出で大きな割合を占めているのが家賃の支払い。今回の自粛によって収入が激減した人にとって、家賃・光熱費・通信費などの月々の支払いが重荷としてのしかかっている。
 上記の給付金が救済措置であることは誰でも理解できるが、本気で国民を救済する気があるなら、それは論点がズレていると言わざるを得ない。新型ウィルスの感染拡大を防止するために外出自粛をして、それによって働けなくなり家賃を払えなくなった人がいる一方で、新型ウィルスの影響をほとんど受けていない人もいる。この場合、次のように考えるのが公平なあり方だと思う。

 家賃・水道光熱費・通信費などが無事に回収できるのは「社会が健全な状態」にあるからだ。今は「健全とは言えない状況」なので、新型ウィルスの影響を受けなかった業界からも何らかの譲歩を引き出させる必要があった。それこそが本来の政治の仕事だった。要するに・・・

本来ならば、社会の問題は「社会全体で痛み分け」にすべきだった。

 が、産業界の既得権益を優遇する自民党には、それができない。だから色々と勘繰ってしまう。不動産業界が優遇され過ぎていないだろうか。あるいは、固定資産税の負荷が大きいのではないだろうか。だから賃料が高いのではなかろうか。財務省国税庁の業務方針を国民の前でもっと透明化し、議論する余地があるのではないだろうか。

 現在、外食産業は「テイクアウト専門店」が盛況だ。ソ-シャル・ディスタンスが求められる今、広い店舗面積を有していても、それが売上に貢献するとは言えなくなった。しかも、テイクアウト専門なら消費税は8%で済み、税制上でも有利だ。
 一方、ホワイトカラ-のオフィスでも「テレワ-ク化」が進行中で、会社の敷地面積縮小の動きが出てきている。経済活動自粛によって収入が激減した市民にとっても、家賃の支払いは重くのしかかっている。
 高すぎる賃料に苦しんでいる人が大勢いるのは、ギリギリまで利益の最大化・効率化を推し進める資本主義の「余裕・遊び」の無さが根本原因だ。遊びが無いから非常時に過大な損害が発生する訳。効率化・合理化の裏には「逃げ道を塞ぐリスク」が紛れていることも知っておくべきだ。

 コロナ禍によって、ようやく「高すぎる賃料」がクロ-ズアップされたと言える。今までこの問題が表面化してこなかったのは「税収の優等生」として政府が優遇・依存してきたからだと思う。
 が、価値観は既に変わってしまった。しかも人口は減少しているのだ。ソ-シャル・ディスタンスを考慮すれば、単位面積辺りの売上は確実に減少する。土地や賃料は需要に合わせ、さらに下落すべきだ。そうしないと、「新世界」では商売が成立しなくなると自分は考えている。
 そもそも、地球は誰の物でもないのだ。土地を投機対象として囲い込み、マネ-ゲ-ム化するのは倫理的にも宜しくない。土地にはコモン(共有財産)として扱うためのル-ル作りが必要である。

 人口減少は悪いことではない。そう認めることで、今の社会には改善できる点が色々あることが、よりハッキリと見えてくる。例えば日本の都市部では、密集した住宅事情による住民同士のトラブルが後を絶たない。
 隣から聞こえるピアノ・ギタ-等の楽器の音がうるさい、とか・・・
 個人所有(管理)の私道が、実質的には公道として周辺住民の通り道として使われてしまっている、とか・・・
 換気扇を回してキッチンでサンマを焼いていたら、後から建ったアパ-トの住民から洗濯物に匂いが付くから止めてくれと苦情が来たり、とか・・・。

 これらの問題はマスコミでもよく取り上げられるが、報道のされ方にずっと疑問を感じていた。要するに「騒ぎを起こした住民」だけが悪者扱いされることに自分はずっと違和感を覚えていた。
 よく考えれば、住宅や土地区画そのものに住民トラブルを誘発する原因が元々内在しているからこその問題だと分かる。だから実際に人が住み始めると、当然の帰結としてトラブルは発生する。

 そもそも、日本は人口減少しているのだ。土地を買う人が減る分、地価はもっと安くできるはず。そして本来なら、もっと余裕のある区画割りをすべきだ。そうすれば「騒音トラブル」などは確実に減少する。人が音楽を楽しむのは文化的にも重要だ。周りのクレ-ムに脅えてひっそり暮らさなきゃならないなんて、地域にとって「マイナスの価値観」だと自覚すべきだ。
 個人所有の私道を使わないと近隣住民が移動できないというのは都市設計の欠陥としか思えない。結局、住民トラブルの根本には、行政と不動産業者の安易な慣れ合いが絡んでいると思っている。

 行政側に想像力があれば「住民トラブルが起きない街づくり」は充分可能だ。人口減少をネガティブに捉えるのはやめよう。右肩上がり前提の政策にばかり気を取られているから失敗するのだ。
 右肩下がりに適切にマッチした政策を考えれば、大儲けは期待できなくても、リスクの少ない安心できる社会を作ることができる。人口流出に悩まされている自治体が一番考えるべきは「正直・安心・誠実な街づくり」に尽きる。
 場合によっては厳しい決断を迫られることもある。人口は減少しているので、限界集落を閉鎖する勇気も必要だ。社会インフラをコンパクトに縮小する必要もある。今後のインフラ拡大は確実に失敗する。人口が減少した未来には、それをメンテナンスする人がいなくなるからだ。無計画なインフラ拡大は、未来の「ゴ-スト・タウン」を生み出すだけだ。