パンデミック後の新世界を作るために (foussin’s blog)

(『見捨てられた世代』からの提言)

国民の声:どうなる、新しい資本主義?(自分のビジョンも提示)


2021/12/10 11:02 fri:pv 716【記事総数:95(当記事含む)】

 米国主導での『民主主義サミット』が始まった訳だが、我々が自覚すべきは、現在の世界の混乱は『資本主義 VS 社会主義の権力闘争』に過ぎず、それに民主主義が巻き込まれているだけの話…という事だ。
 たぶん、民主主義サミットの最大の議題は『台湾問題』だろう。民主主義は多様性を重視する。そのためには『対等』な立場で議論できる事が一番重要となる。民主主義の危機を自覚するなら、対等を妨げている規律を排除すべきだろう。

 で、一番最初に取り組むべきは『国連常任理事国特権の撤廃』だと思っている。理事国の拒否権によって人道支援が妨げられているのだから。そうしないと台湾独立が承認される事は永遠にあり得ない。
 あと、国際的に『国家』をどう解釈・承認するか…それも国家承認と絡んだ議題になり得る。元々の国連は『戦勝国連合』の意味合いが強く、その名残が『特権』として残った。だが、これは既得権益のために使われるだけで、平和維持には貢献していない。

 今回のサミットでは、国連についてどこまで踏み込んで行けるか…それによって民主主義復権への本気度が試されると思っている。


 次は岸田政権について。
 正直、今回の岸田政権の政策にはガッカリしている。その失望感から心が折れかけた。レジリエンス喪失感は半端ない。最近また、毎日のように人身事故で電車が止まる事が増えてきたが、それもまた、未来に希望が持てない社会を表していると思う。

 だが、野党の政策が頼りないのも事実で、特に『市民連合』の公約は自分的には、ほとんど響かなかった… ジェンダー関連や夫婦別姓とかはマイノリティ好みで良いと思ったが。
 市民連合の公約策定には共産党も深く関わっている。日本共産党自身が中国共産党との違いを明言してくれれば野党共闘の結束は、より固くなるのだが、そこはグレーなんだよな。
 場合によっては中国との『パイプ役』を日本共産党が担う可能性もあるので、民主主義政党も強引な踏み絵には踏み切れないようだ。どんな思想に対しても外交ルートの回線は開いておく必要がある。そこが民主主義のツライ所…


 で、岸田政権の新政策だが…成長路線の一環と考えられる『賃上げ政策』は前回に書いたとおり、低所得の労働所得の改善に繋がるとは思えない。
 むしろ中小企業を余計に弱体化させる…これは安倍・菅政権と全く同じ路線だ。竹中平蔵ドクトリンは既に破綻している筈…なのにまだ中小企業淘汰政策を続ける気なのか。

 だが、賃上げ政策は野党の支持団体である『連合』に歩み寄る政策でもある。それで野党票を削る効果はあるかもしれない。つまり来年の参院選を見越した政策と言えなくもない。
 賃上げ政策をインフレターゲットと連動させるためには、社内の賃上げだけでは不十分で、『下請け業者』へのコストダウン圧力を弱めなければ社会全体の所得向上は望めない。『連合』はそこに踏み込んで行かなければ意味がない。

 それよりも、自分が何よりも懸念しているのは、賃上げ政策は『法人税優遇』とセットにしているため、これで累進課税の累進率上昇による増税が、余計にやりにくくなってしまった事だ。累進課税こそ『民主主義を正常化させる税制』だと自分は考えているので。

 公明党肝いりの子育て支援の10万円給付には不公平さがある事が判明。さらに現金とクーポンに分けて配布するためのコストが余計にかかる事まで判明している。

 また、マイナンバーカードを普及させないと給付対象者を特定できないなんて、なんか変だ。マイナンバー自体は、ユニークな番号として既に全国民に付与されているのだから、やり方はいくらでもありそうなものだが…
 やり方が思いつかないのは、結局は『政治家の無知』が原因じゃないのかなあ。給付条件のフィルタリングなんて、データさえあれば既製品の SQL でも簡単に実現できるし、政府内での機械的処理(人間の覗き見を防ぐため)なら『個人情報の漏洩』もない…
 あと、民間が利用できる方式…それは税収を意識した『嫌らしい下心』が見え見えだ。民主国家がやる事ではない…だから普及しないのだ。カード情報を民間売買に使用しない条件に今からでも変更すべきだ。それは野党に頑張ってもらいたい。

 『住民税が非課税の世帯』の10万円給付というのも、生活困窮者の救済策としては中途半端だ。無職や失業者への支援というのは分かるが、それは年金生活者=高齢者=票田という側面もあると思っている。
 一番困っているのは勤労大学生や年収200万円以下の低所得者(労働者の3割がこれに該当している…)の筈なのに、ちょっとでも住民税を払っている世帯は除外されてしまうようだ。
 『住民税が非課税』…これも適用範囲が曖昧で意味不明。困窮者も生活がかかっているから、1年間ずっと非課税状態では耐えられる訳がない。必ず何らかの仕事をしている筈だ。そんな彼らが給付対象外では自殺者が増えるだけでは?

 自民党の政策には、常に『党支持団体』の意向がチラついて見える。税制優遇とセットの賃上げ政策は、経団連経済同友会の意向が絡んでいると自分は見ている。

 継続中の『住宅ローン減税』だって、購入者優遇というよりも、本当は土建組合や不動産業界を優遇した政策だと自分は考えている。マイホーム購入者が増えれば彼らも儲かるからだ。
 で、地価や不動産価格が『住宅ローン減税を織り込み済み』で決めている疑義があると自分は考える。例えば、外資による住宅価格の高騰があるにしても、それは高層マンションや店舗ビルが主な対象だ。

 高過ぎて誰も買わなくなれば、少なくとも世帯向き住宅価格は自然に下落する筈だ。なぜなら、日本は人口が減少しているからだ。
 国民はもっと賢くなるべきだ。人口が減少しているのに、相変わらず宅地造成地には隙間なくウサギ小屋がびっしり建てられ、その結果として住民同士のトラブルを誘発している。もっと余裕のある区画割で都市整備をすれば、住民トラブルが起きない街づくりは可能だ。

 政府による保障がある事で、逆に住宅価格の『高止まり硬直化』を助長する可能性がある訳。これは官民癒着による価格硬直の典型だ。
 特定の業界が政治的に優遇されると、国民の所得に占める消費割合に悪影響を及ぼす恐れもあり、それは格差拡大要因になり得る。消費割合のバランスの是正も、公平な分配を決める重要な要素だが、政府は意図的に『適正な価格設定』に注目が集まらないようにしている疑いがある。

 政治家も、支持団体からの圧力にばかり気を取られていると、広い視野で物事を見る分析力が衰えてしまう。それは一般人・政治家に関わらず、日本全体が資金力・発言力の強い権力に流される危険性を孕んでいる。

消費税の問題点

 さて、法人税を上げられないなら、その先に『消費税増税』がチラついて見えてくる。前回、消費税増税低所得者にとっては所得税増税と変わらないと書いた。
 低所得者可処分所得の大半を消費に使わざるを得ないからだ。そうなると低所得者は、5%の所得税可処分所得に対する8%以上の消費税を取られる事で、実質10%超過の所得税を取られているのと同じ事になる訳。
 一方、高所得者可処分所得の全額を消費に充てる必要はない(月々の貯蓄額もそこそこある)。それは結果的に高所得者よりも低所得者の方が所得に対する税負担率が重くなってしまうのだ。
 この時点で貯蓄率格差が開き始め、自由に使えるお金の割合にも差が生じ始める。これは若年層の起業精神をへし折る元凶となっている。で、これも『税の逆進性』の一面を表している。

 しかも消費税増税は『強制的な物価上昇』を意味する。これは所得が上がっていないにも関わらず物価が上昇する『スタグフレーション』と同じ悪影響を及ぼす。

 化石燃料のエネルギー価格上昇に伴う世界的物価高は今後もずっと高止まりが続くと自分は考えている。今はアフリカ由来の変異ウィルス(オミクロン株)の影響で下落しているが、これは一時的な現象だろう。
 ただでさえスタグフレーション気味なのに、さらに消費税を増税したら『成長戦略』など机上の空論として吹っ飛んでしまうだろう。

 よく、消費税(付加価値税)は世界的に見ても標準的な税制だから悪いものではないという人がいる。それに対して自分は「間違っているのは世界標準の方だ」と主張してきたが、この論調では逆に異端児扱いされてしまうようだ。

 そこで視点を変えよう。消費税は世界的に見ても標準的な税制とは言えない。なぜなら、世界最大の資本主義国であるアメリカは消費税を導入していないからだ。
 日本の資本主義者(高所得者)のほとんどが、この事実については全く言及しない。なんか不自然だよね。それに消費税を導入している国は、ほとんどが経済成長の度合いに連動して税率を変更する条項を設けている。

 停滞経済下で消費税増税を強行するのはスタグフレーションを誘発し『成長阻害要因』になってしまう愚策中の愚策だ。日本政府は、その愚策を平成不況下でずっと繰り返してきた。

富裕層の死蔵(内部留保+配当金) > 信用創造(銀行融資)

 財政規律を気にするのであれば、まずは経済循環を正常化すべきで、その循環を助ける税制こそ累進課税である。富裕層による死蔵を事前に防げるからだ。マネーストックの循環が正常化すれば、信用創造によって自然に貨幣量も増えて税収も増える。

 『信用創造』という概念は一般人には馴染みがないと思うが、これをタイトに分かり易く説明するのは難しいので各自ググってほしい。ネットで探せば分かり易い(?)説明をしている文書が多数存在している。
 大雑把に言うと、銀行を介した企業間取引の連鎖反応によって預金通貨が創造され、現実の現金通貨(マネーストック)を超えるマネーが実体経済圏で循環する。これはフローがストックに化ける仕組みだ。で、改めて次の不等式を見てほしい。

富裕層の死蔵(内部留保+配当金) > 信用創造(銀行融資)

 巨額の内部留保を貯め込んでいる大企業や富裕層は、もはや銀行融資に頼る必要はなく(つまり預金者=債権者)、富裕層の巨額預金を融資できる貸付先が無ければ、銀行は預金額に見合う信用創造を行う機会が得られない。
 現在、大企業の多くは内部留保が使えるので銀行融資を必要としていない。一方、近年の日本は中小企業を潰す政策を続けてきたので、中小企業にも巨額融資を引き受ける体力は残っていない。

 銀行の中には莫大な運用資金が有り余っているが、その活用方法がない。だから国債購入に向かってしまう。短絡的に見れば、それは長期金利を低く抑える事に貢献しているが、同時に国内産業が成長できない足枷にもなっている。
 そうなると、銀行を機能させるためには、富裕層以外の国民を全て借金漬けの債務者にでもするしかない。しかし、その債務さえ富裕層(債権者)が吸い上げてしまう。なんかもう、全てが悪循環に陥っている。

 結局、融資が行われなければ信用創造も起こらないので、要するに富裕層の死蔵こそ信用創造を機能不全にしている元凶であり、それは実体経済をデフレにしている元凶でもある。また、先の不等式は、経済学者ピケティが指摘した次の不等式とも関連していると自分は考える。

r>g

  r=資本収益率(純資産の成長率)
  g=GDP(国民所得)の成長率

 本来、国家の債務(国債)は信用創造による貨幣量増加に伴って地道に税収を増やしながら返済する。それが現代貨幣理論(MMT)の基本の筈。そうしなければ市中の貨幣量減少を招き、さらなるデフレを助長する。

 この状況を見れば、インフレ税に頼った財政健全化計画なんて、もはや一昔前の頭の悪い政治家の発想だと分かると思う。保守的(自国第一主義)な政治家は『名目GDP(国家の総所得)』ばかりを気にするが、現在のグローバル経済は別の論理で動いている事に気付く必要がある。

 今は富裕層の死蔵率や海外流出が多すぎるので国内循環が減少し、信用創造による自然なインフレが機能していない訳。貨幣とは『国家が発行』するものであり、つまり『その国の共有財産』である。富裕層の死蔵はそれの『私物化』に他ならない。

 信用創造が機能していない貨幣制度の下で政府が債務返済を行い、国が借金を全て回収したら市場に流通するお金がゼロになってしまう。要するに今の日本は、国債発行が信用創造の代用品になってしまっている。

 財務省はこの点をちゃんと理解する必要がある。理解しているというなら、それを国民に説明する義務がある。少なくとも今では、それに気付いている国民は少なくない。もう詭弁は通用しないよ。累進課税に反発する財界の面々も、それが国家の貨幣制度を崩壊に向かわせている事を自覚してもらいたい。

 資源を『無限にある』と勘違いした事から、人類は地球環境危機に直面した。経済も同じだ。世界経済は『収益率を超えた死蔵=富の独占』には耐えられない。

 経済学は、別の科学的知見や多様な考え方や視点がある事を、もっと勉強する必要がある。経済学に登場する数式は『教育格差を利用した一般人への欺き』として利用されているに過ぎない。我々は、経済を総合知で理解する必要がある。無制限の資本競争には弊害があるのだ。

消費税の問題点、再び…

 で、循環の正常化を実体経済下において阻害しているのが消費税だ。消費税は低所得者が自己投資をする前に自己資金を削ってしまう欠点があり、それが起業精神をへし折ってしまう。
 社会を良い方へ変える熱量を持っているのは『現状に不満を持っている経済弱者』の方である。ハングリー精神は社会を進化させるが、強欲は現状維持による停滞を招く。今の日本には『保守』を『強欲の言い訳』として悪用する人が多すぎる…

 累進課税ならば、低所得者でも成長するチャンスが与えられる。つまり累進課税は『取り易い所から取る』のではなく、セーフティネットの役割も担っている事を忘れてはならない。
 思い出してほしい。20年に及んだ平成不況の中で、高所得者達は日本経済の成長ビジョンを提示しましたか? デフレは待つのが吉とか言って、何もしなかったよね。富裕層がダンマリを決め込んでいた頃、多くの低所得者達が消費税に縛られながらもチャレンジし、資金不足で失敗し続けたのだ。

 その反動が、ポピュリズムを煽って大衆を誘導して儲ける『短絡的なビジネスモデル』を蔓延させたと自分は考えている。これは産業基盤の成長を伴わない経済システムであり、それが日本産業の埋没を加速した。

 さらに累進課税は、景気が良くなって皆の所得が増えれば自動的に税収が増え、不景気の時は自動的に減税される仕組みでもある。これを『ビルトイン・スタビライザー』機能と呼ぶ。これは、TOKYO MX『東京ホンマもん教室』というテレビ番組で藤井聡(元内閣官房参与)が言っていた。

新しい資本主義=自由貿易への警鐘…かな?

 さて、『新しい資本主義』の起動…その第一歩を『経済安全保障の強化』に充てる事にしたようだ。具体的には『台湾の半導体メーカーの誘致』が挙げられている。
 こういう視点は野党には無いもので、これは悪くないと思う。ただ、やるのが遅すぎた。半導体価格が安定し始めた2005年頃(WindowsXPの時代)にそれをやっていれば、今頃になって大慌てする必要はなかったのだ。

 今回のコロナ禍では、先進国のほとんどが『排他的保守(保護主義)』に走った。今さら『自由貿易』とか言われても説得力ナシだ。だから自由貿易協定そのものの見直しが必要だ。
 そこで『経済安全保障』の概念が登場した。それは『自由貿易リスク』への対応を意味する。高い輸入品を買わされているのが今の自由貿易の現状だ。こんな馬鹿馬鹿しい国際分業論には付き合ってられないだろ。

 だがしかし、その自由貿易を推進したのも安倍政権…つまり自民党である。これも忘れるべきではない。

 が、それ以外の成長ビジョンの提示が弱い。日本が重視すべきは『再生可能エネルギー産業』や『食・農・防災産業』など、内需産業(自給率向上)への設備投資を促す事だと思うが、それに対する予算は防災産業しか示されていないようだ(自分が得た限りの情報なので確かとは言えないが)。

再生可能エネルギー産業は公共事業で興すべき

 自分は再生可能エネルギー産業を『公共事業』で推進すべきだと考えている。電事連原発メーカーに忖度していたら、いつまで経っても日本のエネルギーの地産地消は実現できない。

 EU だって『燃料電池バッテリーのアジア依存』からの脱却を目指して EU圏内での協力関係強化に動いている。
 これは自由貿易の観点から見れば相当の『保護主義』だが、なんだかんだ言っても外国は皆やってる。ならば日本だって遠慮せずに『経済安全保障』の名目で、国家事業でエネルギーの地産地消を目指すべきだ。

 例えば5か年計画で『総額10兆円規模』の予算を付ける。その初年度で半分の5兆円を47都道府県に分配すれば、都道府県ごとに約1000億円が使える計算だ。

 この場合、人口の少ない地方の方が自然エネルギーへの転換が早く進む事になる。問題は労働者が集まるかだが… とにかく、それで自治体別に『自然エネルギー発電所』を作るための雇用を各地に生み出す。

 その時、さらに民間投資も呼び込めば予算規模を超えた事業を興せる筈。ただし外資参入には警戒が必要だ。エネルギー生産の基本は地産地消が絶対条件になるからだ。だからこそ、そろそろ金融政策の引き締めが必要だと自分は考える。

 現在の円安は間違いなく『悪い円安』だと思うが、過剰に心配する必要はないと思う。海外投資家は、いくら煽っても反応しない自粛国家・日本から距離を取り始めたと思う。これは外資依存から抜け出す絶好のチャンスだ。累進課税や資本課税の増税をするにも良いタイミングなのだが…

『小さな政府』のクセに財政規律や消費税で国民を束縛する矛盾が日本を駄目にした…

 今年の感染拡大以降、国民は政府の言う事を聞かなくなっている。今や『株高・トリクルダウン政策』を信じているのは現状維持路線を是とする株式会社の社長だけだ(主に自民党支持団体)。
 パンデミック時に株高になる経済を誰が歓迎する? 間違っているのは『世界標準』の方だと、今なら誰もが納得するのではないだろうか。

 現在の金融経済は投機マネーに振り回され過ぎている。社会が混乱すればするほど相場が動き利鞘が生まれる。それに乗じて株高へ持っていく手法は投資家が『総ヘッジファンド化』していると思われる。混乱に乗じた金儲けを『イノベーション先取り』とか言って誤魔化している。

 で、外資に荒らされるぐらいなら株式会社を解散し、有限会社としてリスタートした方がマシじゃねーの? って思う。誠実に社会貢献している会社なら、公開株に頼らなくてもクラウドでも資金調達は可能だ。

 今までは政府与党主導で『公開株式市場』頼りの金融政策を続けてきた。これは結果として新自由主義的グローバル経済圏に国内の付加価値を奪われるだけに終わっている。

 政府は若い国民への投資を疎かにしてきたために、現在の 30~50代は事実上の『見捨てられた世代』になってしまった。政府は子育て支援名目の給付金は支給しても、彼らが安心して生きて行ける『産業基盤』への投資をしなかった。
 それが少子化の最大要因になっている。2人以上の出産を国に推奨されても、実際に大学まで行かせてあげられるのは 1人だけという家庭が多い現状では、少子化が改善されるとは思えない。

 要するに『小さな政府』という呼称は、ハッキリ言えば『無責任な政府』を自己正当化するための『言い換え・言い訳』に過ぎない。

 また、ポピュリズムが黙認される今の社会ではイジメも容認され易い。こんな殺伐とした社会に子供を送り出したいと思う親もいないだろう。
 ポピュリズム全体主義の蔓延は、日本が『社会主義+資本主義』に傾倒し始めている事の裏返しに他ならない。平和な社会を実現するには『民主主義』こそ重要だと認識すべきである。

 政府は国民への投資をせず、何もしてくれなかった。ならば勝手にやるしかない。その場合、政府は国民のやる事を邪魔しない事が一番重要だ。最大の邪魔は『財政規律や消費税』で国民を束縛する事だ。

 日本の財政赤字の膨張はバブル崩壊以降に始まっている。多くの国民はデフレ経済下でもちゃんと借金返済をしてきた。財政赤字の責任は赤字国債分のマネーを内部留保として貯め込んできた富裕層にある。
 だから資本課税や累進課税による増税こそ筋が通っている。財政赤字を消費税によって一般国民に押し付けるのは筋違いだ。

 資本主義の価値観に準じた税制(定率課税=逆進課税)をやめて、民主主義の税制(累進課税)に戻せば、日本は自然に立ち直る。なぜなら、民主主義こそ『未来への展望と安心感』を与えてくれる思想だからだ。

続・再生可能エネルギー産業は公共事業で興すべき

 話を戻そう。再生可能エネルギー発電では、従来の『大規模プラント発電所』にこだわる必要はない。むしろ地の利を活かした小規模発電を各地に分散させ、過不足分を融通し合う分散型ネットワーク(連系線接続が必要)を構築する方が現実的だ。だから数千億円程度の予算を日本各地に分散投資するのが適している。

 この時、何よりも重要な事は『ステークホルダー』への分配率を高める事だ。株主や管理職、外郭団体などに国家事業予算を食い物にされてしまったら、適正な設備投資に支障が出る。子育て支援の給付金に1200億円も経費が使われるような事が常態化しているのは問題視すべきだろう。

 持続可能社会において、火力発電を全否定するのは間違った考え方になる。林業と連動し、間伐材から作った木材チップを利用した火力発電も実在する。それは一次産業の自給率(地産地消)向上にも貢献している。
 ただし間伐材は有限な資源なので、同時に他の燃料(可燃ごみとか)も併用できるハイブリッド化も必要だ。要は燃料を輸入せずに『持続』できる事が重要だ。間伐材に別のニーズが生まれる可能性もある…その時は発電方式を転換する決断も必要になる。

 さて、自然エネルギー発電の長所は、完成してしまえば『燃料費がタダ』になる事。自然エネルギー発電のコストは建設費・人件費・維持費だけで済む。
 そうなれば、人件費を上げても国際競争力には影響しなくなる。エネルギー価格は付加価値の土台を成す…再生可能エネルギー地産地消が重要な点はソコにある。

 発電所の立地場所は海沿いや湖畔、川沿いが望ましい。海水や淡水があれば、自然エネルギー発電での電気分解を使った『グリーン水素』の製造も可能になるからだ。つまり、海に囲まれ降雨量の多い日本は恵まれた環境にある。
 特に海水を電気分解すると副産物として『塩素ガス』や『水酸化ナトリウム』なども作られる。これらは工業製品の製造過程での利用価値もあるので、発電所の付加価値を高める事になる。

 という訳で、海沿いや湖畔の発電所には『水素工場』としての役割も求められる。それを考慮した予算配分も必要だと思う。グリーン水素を製造するには従来の方法は使えないので、選択肢は電気分解の一択になると考える。

 資本主義陣営は『電気分解は非効率』と考えるが、発電所で使う水素なら運搬する必要が無いので、無理に液体水素にする必要はないし急いで製造する必要もないと考える。

 現在、石油タンカーで往復輸送するのに平均45日間も費やしている。一隻のタンカー(VLCC)が輸送するのは日本全体で使用する量の半日分と言われている。そのぐらいの日数をかけても構わないのなら、水素だってじっくり時間をかけて製造しても一向に構わない筈だ。

 つまり『効率』に囚われていては駄目って事。むしろ逆。環境に負荷をかけない発電こそ『持続的で効率的』と考えるのだ。今後は、資本主義が考える効率という価値観からの脱却が求められる訳。

 水素は元素の中で一番小さいため、貯蔵タンクから漏れ出し易い欠点がある。そのため貯蔵タンクには『水素化合物』になる材質が研究されている。
 が、密閉容器スキルなら原発メーカーの得意分野だろう。絶対に漏れてはいけない放射性物質の密閉を研究開発してきたからだ。放射線は水の層で遮断するらしいので、水素の密閉とは要領が違うかもしれないが。

 一時期、三菱重工業が『サステナブル推し』のテレビCM を盛んに流していた。だが、同社は同時に『小型原発』の開発も進めている。前にも言ったが改めて念を押しておく。
 『分散型電源』を推すなら、再生可能エネルギー発電への投資を優先してもらいたい。そうしないと、EU 圏にエネルギー価格を支配されてしまうからだ。局面が急激に変わった事を認識してほしい。

脱成長に対する正当評価こそ持続可能社会の分水嶺

 岸田政権では『成長+分配』を訴えてきた。が、世界で持続可能社会が叫ばれている現在、成長戦略は本当に必要なのか疑問を感じる。
 成長しなくても循環経済が正常に保たれていれば分配は可能だし、税収確保も可能だ。それで充分に国民は幸福を得る事ができるんじゃないかな、と自分は考えている。

 むしろ日本は、脱成長の先行モデルかもしれない。人口比で見れば、日本の一人辺りエネルギー消費量は先進国の中では意外と低いだろうと自分は想像している。あとは再生可能エネルギー地産地消を実現するだけ…そうなれば世界一の省エネ国もすぐソコだ。

 資本主義者の日本人の多くが、世界シェアでの日本の埋没を憂いている。が、自分は低成長を悪い事だとは思っていない。それは途上国と先進国の『国家間格差の縮小』に国際的に貢献しているからだ。

 そもそも、国家間格差さえ無ければ、今のような『世界的インフレ』も起こらなかったし、移民・難民が『金持ちの国』に殺到する事も起こらなかったのだ。

 なんだかんだ言っても、高成長の国は輸出(貿易黒字)で儲けている。富の死蔵率も大きい。だから高成長の国には移民を受け入れる義務がある。移民を拒否するなら、代わりに富の公平な分配に取り組む必要がある。


 現在、自分は電気分解に興味を持っている。何事もやってみなければ分からない。そんな訳で、自分は『水(淡水&塩水)の電気分解』を自宅で実験しようと思って色々と準備している。
 これをやると『塩化物』や『水酸化物』などの有害物質が出る可能性があるので、それが出ないように電極に何を使えばいいか、あるいは有害物質を中和する方法などを勉強中。実験したら、当ブログで紹介する予定…