パンデミック後の新世界を作るために (foussin’s blog)

(『見捨てられた世代』からの提言)

03.給与収入が「中央値」を超過している全給与所得者の給与を物価連動カット

 つまり、低所得者以外の給与所得を削る。削るのは今後受け取る給料で、貯蓄の没収はしない。既に物価が下がっているので、中・高所得者の収入が減っても生活上の実害はない。実際、前回の10万円一律給付金は、ほとんどが貯蓄に回されている程だ。
 給与を物価連動カットした結果が中央値未満となる場合は、中央値の金額を給与価格とする。また、複数の会社からの給与所得がある者は、年末調整(確定申告)が必要だ。
 これは、中~高所得者から低所得者への所得の再分配になる。低所得者の給与をカットしないのは、フルタイム労働ができずパ-トタイム労働に依存する人が多く、そのほとんどが現状でも満足な収入を得られていないことへの配慮だ。これは子育て世代へのセ-フティ・ネットとして機能する。
 低所得者を優遇する理由はもう一つある。収入の大半を生活費に充てるしかない低所得者の消費こそ、実体経済のベ-スを支えているからだ。彼らの消費意欲を高めることは実体経済の健全な成長に欠かせない要素だ。
 前回の一律給付金は、そのほとんどが貯蓄へ回され、消費喚起にならなかったという報告がある。が、その報告には重大な見落としがある。仮に給付金がなかったとしたら、低所得者は生活費の消費すらままならなかった筈だ。そうなれば、2020年の消費は「もっと冷え込んだ」に違いない。あの給付金は、生活費を支える最少限の消費のためにちゃんと役に立ったのだ。

 さて、中・高所得者の給与をカットするのは、中小企業の経営の助けにもなる。もちろん経営者自身の給与もカットするのだが。問題は、低所得者を大勢雇っている中小企業の負担が増す事だ。これについては国や自治体の補助が必要になりそうだが、それについては「再分配政策」の整備を含めた議論が必要になるだろう。
 これらの給与カットは給与所得者だけに適用する。自営業の場合、仕入れ価格・販売価格のバランスによって収入が決まる。仕入れ・販売時に「強制的物価連動引き下げ」が設定される筈なので、成り行きで自然に収入も減ることになる。

 さて、債権引き下げは資本所得の減少に繋がり、給与所得引き下げは労働所得の減少に繋がる。これで多少は格差縮小できるが、貯蓄(内部留保)は不問としているので、一般市民貯蓄と富裕層貯蓄の格差までは解消されない。今回の提言は、あくまでもコロナ禍から市民を守ることを重視した政策だ。
 これを国家レベルで見ると「名目GDPの減少」に繋がる。つまり、今後の税収は減るということ。それを見越しての「債権の強制値下げ」だ。だが、実質GDPで見れば大きな減少にはならない。
 で、この機会を税制や社会保障費の見直しに繋げるべきだ。特に年金については覚悟を決めた見直しが必要だ。「人生100年時代」などという無責任な看板は早めに下ろした方がいい。誰もが長生きできる訳ではないのだから。これは、米国でも国民皆保険を整備する絶好の機会になると思っている。

 金を稼ぐ人は、その分エネルギ-消費も大きくなる。つまり、高所得者ほど環境への負荷が大きい。まずは、高所得者高額納税者=偉い ・・・という価値観を改めていただきたい。全然偉くないから・・・。
 日本国内の全就労者では「年収 200万円台」の人口が一番多いと予想され、そこら辺が所得の中央値となるだろう。つまり市民感覚だと、公務員は相当な高給取りだ。公務員給与は、主に民間所得の「平均値」を参考に算出される。で、一部の高額所得者によって平均値は大きく押し上げられる傾向がある。
 ところが、現在の税制の累進率はかなり低くなっているため、公務員給与を民間平均値で算出すると、公務員給与に占める低所得者の負担額が大きすぎるのだ。これは明らかに不公平である。公務員の平均収入が中央値の右側に有っても別に悪くはないが、市民感覚とあまりにも掛け離れていると、ちょっと考えてしまう。というのも・・・

公務員制度は、民主主義社会の中に存在する「例外的な共産主義」だからだ(共産主義国では全国民が公務員)。

 一般会計予算はほとんど言い値だ。日本は大事な予算決定を公務員に任せすぎた。今のままだと、いつまで経っても財政健全化は望めない。要するに、共産主義の悪い面が除去されないまま予算審議が続けられてきたのだ。その結果が世界最大の「財政赤字」を生み出したと思っている。
 だから、この機会に日本国内の人件費を適正価格に戻す必要がある。と言っても、それは低所得者以外の給与を物価連動カットするだけ。公務員を狙い撃ちにした訳ではなく、中所得者以上を公平に扱っている。その中に公務員の大半が含まれているだけの話。
 年度の途中で給与を削るので、今年度の予算がその分余る。それは非正規公務員、フリ-タ-、研修医などの待遇改善や増員に使うのが良いと思う。残業手当も出ないという話も聞くし。まるで「正規=党員」「非正規=ただの人民」みたい。何処かの国の一党独裁に酷似していて不気味だと思わない?
 ここまでの大掛かりな政策転換を図ると、官僚への負担がさらに増すことになる。現在、自粛要請で働けない人が溢れている一方で、医療従事者、官僚、エッセンシャル・ワ-カ-などへの負担が増している。
 このアンバランスを是正しないと社会は崩壊してしまう。ネックになるのは「資格制度」だ。政府・自治体、そして投資家には、逼迫した現場に無資格者が労働支援できる環境整備をお願いしたい。そして、医療従事者や官僚には「休息」が必要なはずだ。

 という訳で、低所得者の収入は現状維持・現状保証(最低賃金の現状維持)しつつ、中・高所得者の給与カット、及び先進国主導の強制的物価引き下げ政策の実行を提案。そして「債権」も物価に連動して値下げする。つまり、債務者への一定割合の借金免除だ。これこそ「恩赦」と呼ぶに相応しい政策と言えるだろう。既に借金で首が回らなくなっている人や、それどころか、既に倒産している会社も多数出てきていて、それは今後も増え続けるだろう。
 破産者や倒産した会社を更生する仕組みは存在するが、今回の非常事態に巻き込まれた被害者にそれを適用するには、その仕組みは厳しすぎる。彼らに救いの手を差し伸べるのも「人道的」民主主義の使命といえる。あらゆる人にチャンスを与えてこその民主主義だ。債権の値下げについては次項で・・・。