パンデミック後の新世界を作るために (foussin’s blog)

(『見捨てられた世代』からの提言)

脱炭素:再生可能エネルギー普及を妨げているのは…


2021/11/07 14:02 sun:pv 588【記事総数:91(当記事含む)】

 自民党支持者のブログ投稿の中で、ちょっと気になる記載があった。それは民主主義者の意見を『左派』という一言で片付けようとする論調だ。これって意味の単純化で反対派を抑え込もうとするポピュリズムの典型だと感じた。

 今回のコロナ禍での政府対応への怒りから、民主主義者の発言が過激になったのは事実だが、それを左派として片付けられてしまうのは納得できない。自分はリベラル・革新・左派・保守・右派…とかいう単語が嫌いだ。

 これらは大衆に『対立構図を煽るための単純化されたスローガン』として利用されてきたからだ。リベラルだけど保守…そんな場合もある。そんな単純な話ではない。人の心は常に揺れ動いているからだ。
 そして単語の概念には複数の意味合いが含まれる事も多い。一部の意味だけを切り取る行為は、言葉の世界を貧しくしてしまう。


 自民党支持者の多くは既得権益の内側にいる人間の可能性が高い。特に匿名ブログや SNS ならば…そこを明瞭にしないまま、他者の多様な価値観について自分勝手なレッテルを貼るべきではないだろう。

 同じ理由から、自分は『ゼロコロナ・ウィズコロナ』という単語も嫌いだ。これも、人をどちらかの陣営に強引に押し込めようとするからだ。スローガンやキャッチフレーズを多用する人間はポピュリズムで社会誘導を狙う傾向が強い。

 それが顕著に表れたのが安倍政権だった。例えば『人生100年時代』だ。まるで全国民がそれを了承しているかのように、そのフレーズを多用してきた。それが毎年1万人以上の自殺者が出ている事と矛盾しているとは思わないのか…要するにそれは、弱者の気持ちに寄り添っていない無神経な発言と言える。


 今回の選挙で分かった事がある。それは自民党に圧力をかけても無駄だという事。圧力をかけるべきは、自民党支持団体(支援組織)の方だった。


 日本を『持続可能社会』に作り替えていくには、電気事業連合会(電事連)、ゼネコン、土建組合などを現状維持路線から変えさせなければならないと気が付いた。それを国民の圧力によって達成しなければならないと気が付いた。

 今回の COP26 の対応で日本は、ある環境 NGO から不名誉な『化石賞』を受け取る事になった。これは良いアイデアだと思った。これで自民党も、いつまでも支持団体の言いなりにはなっていられなくなる筈だ。

 支持団体だって、これ以上は自民党に圧力をかける事はできないと気付いている筈だ。「言う事を聞かないと次回は別政党に入れるぞ」と言っても効果はないのだ。別政党の方が、より厳しい要求を突き付けてくるのは明白だからだ。そう考えれば、今回の衆院選も意味があったと思う。

 これ以上、現状維持路線を続けるのは『若者の未来を奪う』事になる。時間稼ぎをして『勝ち逃げ』を狙うのは、もう諦めてくれないかな。本当に迷惑している。

ここからが本題:

 既に再生可能エネルギー発電の技術は実現可能な段階に来ている。それを邪魔しているのが従来の既得権益。で、一番ネックになっているのは『インフラ再整備(小規模発電所の建設)』だろうと想像している。

 再生可能エネルギーの発電方法には、太陽光、水力、地熱、風力、波上発電などがあるが、これらには『地域性・天候・環境依存』の問題があり、電力供給が不安定になる欠点がある。自然エネルギーで電力の安定供給を実現するには、複数の発電方法を組み合わせたハイブリッド型にする必要もある。

 これを従来の『大規模プラント発電』で達成するのは不可能だ。従来のインフラを手っ取り早く再利用できるのは『原発』しかない。だからこそ電事連原発推進派で占められている。

 さらに製造メーカー(三菱重工業など)も原発推進派となり、小型原発を『分散型電源』の位置付けで社会認知させようとしている。
 しかし分散型電源なら、むしろ『再生可能エネルギー』で考えるべきだ。小型原発なら供給不安定のリスクは無い。が、発電所に多数の小型原発が配置される事になり、核の恐怖はより身近になるだろう。

 原発には、第2の福島が生まれるリスクが常にある。それに原発を必要とするのは大都市圏の筈。そのリスクを地方都市に押し付けるのも理不尽だ。本来なら、東京湾や大阪湾のド真ん中にでも建設するのが筋だろう。
 その上で大都市住民に放射線被害が及ばないリスク対策をした上でコスト計算をするべきだ。要するに、今の原発推進派は原発のリスクを公的資金で賄う事しか考えていない訳で、それが『原発は低コスト』の根拠になっている。それはあまりにも無責任だ。


 内燃機関を使った火力発電に頼るなら、水素が使えないかを真剣に検討してほしい。水素エンジンのバイクがある。潤滑オイルと一緒に燃やすので、多少は二酸化炭素が出るが、オイルを生物由来品にすれば『実質ゼロ』だ。
 それは従来エンジンと比べれば CO2排出量は皆無に近く、排気ガスの大半は水蒸気だ。エグゾースト・ノートにこだわるマニアにはたまらない逸品だ。水素だと、空気よりも排気音が高くなりそうだが…

 アンモニア発電も、鉱物資源からアンモニアを精製するのでは意味がない。発電の燃料として鉱物・石炭を輸入するのも腑に落ちない。下水施設からアンモニアを抽出するとかなら、まだ納得できるのだが…

 一方、再生可能エネルギーの発電には地域性・天候依存などの問題がある事から、従来のような『大規模プラント発電所』から放射状に各家庭に電力供給するシステムは実現不可能。そこで、自治体レベルでの小規模発電所を分散型ネットワーク(連系線)で繋いで過不足分を融通し合うシステム構築が必須となる。

 現状の自然エネルギー発電による電気を電力会社に買い取らせるやり方にも修正の余地がある。火力発電で電力が余った時に自然エネルギー発電の方を止めるという矛盾を抱えている。大規模発電は簡単には止められないからだ。
 今後は、余剰電力への対策としては『バッテリー増産(蓄電)』という方向性が望ましいと思う。それによって余剰電力が在庫投資としても扱われる。これはエネルギーの低価格化に貢献すると思う。

 で、再生可能エネルギー発電のインフラ整備では、地域性・天候依存の問題から、発電実績は企業努力だけでは評価できない。なので各発電所をコモン(共有財産)として管理すべきであり、最初は非営利企業(公営)で立ち上げる必要もあると思う。

 これは、電事連が従来の既得権益を失う事を意味する。だからこそ頑なに抵抗している訳。が、電事連がいつまでも大規模プラント方式(原発とか)にしがみついていては、いずれ日本はエネルギー危機に直面する。それは自民党だって気付いている筈だ。

 しかし、再生可能エネルギーへ移行できれば、燃料の輸入代が節約できる。エネルギーの地産地消を実現できなければ SDGs を達成したとは言えない。
 これは内需産業にとっても一般家庭にとっても『エネルギーコスト削減』という大きなメリットがある。普及が進めば、少なくとも若い世代はその恩恵を受けられるのだ。一刻も早く実現するのが大人の責任ではないだろうか。

 特に欧州諸国は、そのコスト削減効果を利用して輸出強化に繋げようとしているようだ。今はコスト高でも、いずれはそうなる。世界が自由貿易の強化に走っている裏には、そういう思惑もあるだろう。

 資本主義陣営は、エネルギー問題が解決すれば『大量生産・大量消費社会』を再開しても大丈夫と考えていそうで、それがちょっと心配だ。口では『地球に優しく』とか言ってても、結局は金儲けが本音らしい。民主主義、どこ行った?

 実際、今回の COP26 では、会場が自然エネルギー産業の商談場所になっている。で、エネルギー産業の転換が遅れている日本に対して、欧州は活発に風力発電などの売り込みを仕掛けて来ている。

 エネルギー価格は産業の付加価値の土台を成すものだ。それを海外に押さえられてしまったら、日本は商品価格を自分の意志で決める自由をも失う事になる。それは独立国という面目も失い、国際競争でも圧倒的に不利になる。

 エネルギーの地産地消が実現できなければ、日本の全産業が海外資本に牛耳られてしまうと言っても過言ではない。

 今回、日本は COP26「脱石炭」声明には参加しなかった。これは賢明な選択だと思う。そうしないと、欧州の再生可能発電システムを強引に買わされてしまうと思われるからだ。

 だが、「まだ大丈夫」とか思っていては手遅れになる。共同声明不参加は、その間に『欧州に追い着くための戦略』だと理解する必要がある。エネルギー生産だけは、絶対に地産地消を実現しなければならない。輸入材を必要とする発電システムでは、日本製品はコスト面で海外勢に負けてしまう…自明だろう。


 ただ、世界中が再生可能エネルギーにシフトすれば、多くの国は内需産業だけでやっていける筈だ。なので自由貿易が儲かるのも一時的だと思う。

 今は国連常任理事国特権を持っている米国・中国・ロシア等が自由貿易に参加する事への警戒は必要だ。彼らは国際協定や国際規格の策定で有利な地位にあるからだ。だが、世界が内需重視の経済政策にシフトしてくれれば、世界は今よりもずっと平和になっている筈だ。

 だからこそ、今後の電事連はクリーン・エネルギーのインフラ建設に積極的に関わるべきだし、それが自身も含めた日本全体の利益に繋がると考えるよう、思考の転換が求められる。

 電力供給網を分散型ネットワークに改める事自体は難しくはない筈だ。既にインターネットという分散型ネットワークが存在しているのだから。そして、内部留保や配当金を死蔵させている大企業や投資家も、巨大資本を吐き出すなら、それは今じゃないですか?