パンデミック後の新世界を作るために (foussin’s blog)

(『見捨てられた世代』からの提言)

総括:株高が好景気に直結しなかった理由(大域的アベノミクス総括と今後の戦略)


2021/10/22 20:37 fri:pv 546【記事総数:87(当記事含む)】

 当ブログでは、権力者の詭弁に対抗する知恵を提供する事を最重要視している。当文章が経済弱者に自己防衛の武器を与える一助になると信じ、これを書いている。長文なので読むのが大変かもしれないが、選挙前の今、重要な事をたくさん書いているので、ぜひとも目を通してほしい。


 題名に書いた『株高が好景気に直結しなかった理由』について、結論から言ってしまおう。それは、アベノミクスは日本経済の『循環』を破壊した…それが不景気の元凶であり、株高でのトリクルダウンを無効化した。今回はそれについて順を追って説明する。

 本当は、選挙に備えて「どの政党に入れれば良いのか分からない」という若年層のために、日本の政党を簡単に説明しておきたいと思っていたのだが、その前に今回は『アベノミクス』のどこが駄目だったのか、大域的な総括をする。
 これをやらずに選挙戦へ突入とは、国民に考える時間を与えない姑息・恣意的な作戦だと思う。選挙までに時間が無さすぎる。


 アベノミクスを評価するには、グローバル経済・世界情勢を客観的に見られるマクロの視野と、大域的な捉え方が必要となる。内政だけに責任転嫁しても何も解決しない。皆、それに気付いているからこそ、ビビッてしまっている訳。

 でもね、本当の事を言えない空気こそ同調圧力と呼ぶに相応しい。正しい事は「正しい」、間違っている事は「間違っている」と言い切れる社会…それこそが民主主義社会の正しい姿だ。

 今回の日本の選挙で、再び資本主義政党が与党になれば、世界中の民主主義者が失望するだろう。資本主義は、民主的な理念よりも利害を優先するからだ。
 ミャンマー市民、香港市民、台湾市民、アフガン市民達が見つめている事を、日本人は忘れるべきではない。困っている彼らを助けたいと本気で思うなら、まずは日本の民主主義の火を消さない事が何よりも重要となる。

株高は好景気に直結しなかった…

 今回のコロナ禍では『株高不況』という、トリクルダウンとは完全に矛盾する経済状況が出現した。大勢の市民が病死する中で、莫大な利益を得た大企業や投資家がいた事に『モラル崩壊』を感じた人も多いと思う。特に海外投資家が大儲けしたようだ。

 しかしこの現象は、実はコロナ禍の前から進行していた。金融経済は好調だけど、それが実体経済には全く影響してこなかった…
 簡単に言っちゃうと、金融緩和によって海外資本を呼び込み株高を達成したとしても、それを経済成長へ繋げる事が出来るのは『伸びしろが大きい途上国や新興国』もしくは『人口が非常に少ない小国』に限られるのだ。

 途上国や新興国の多くは『人口増加』の過程にあり『平均年齢が若い』…それが経済発展に寄与する訳。このような状態を『人口ボーナス期』と呼ぶ。要するに人口ボーナス期にある国こそ、世界経済の中心地となる。

 実は日本も、高度経済成長期時代が人口ボーナス期となっていて、それで経済成長を実現した。国家にとって人口ボーナス期は一度しか起こらず、そのピークを越えると『人口オーナス期』と呼び、停滞(成熟)を余儀なくされる。つまり、現在の日本は人口オーナス期である。

 実は、米国も中国も欧州も、先進国の大半は既に人口オーナス期に入っている。ところが、日本以外の国はそこそこの成長率を維持している。その理由として大きいのが『製品の国際規格』であり『自由貿易』である。
 国際規格や自由貿易の実現には、各国の国家主権よりも上位の法律が必要になる。それが『国際協定』であり、その協定を自国優位になるように策定してきた事で、米中欧は経済成長を続けている。つまり国家主権を骨抜きにする不平等条約が、まかり通っている。

 一方、海外資本を呼び込んで成功している小国の代表が『ドバイ』だ。資源の無いドバイが成功できたのは『人口が非常に少ない』ためである。人口が少なければ分配も手厚く出来る。
 それが成功の秘訣であり、よく考えれば単純な話。それで『国民一人当たりGDP』を異常に高めている。
 だがそれは、生まれ落ちた人間のごく一部だけが繁栄する『不平等の極致』を体現した政策と言っても過言ではない。自分はこれを、民主主義だとは絶対に認めない。

 市民のみんなによる合議制で社会の在り方を決めるのが民主主義である。それを「それは社会主義だ!」と言って煽り、否定する資本主義者こそ詭弁である。

 金融緩和によって海外資本を呼び込み株高を達成する手法は『トリクルダウン』そのものだ。アベノミクスでは、そのトリクルダウンが機能しなかった。富める者に対しては莫大な利益をもたらしたが、大多数の国民には所得減少をもたらした。
 トリクルダウンを停滞期の日本で実現するには、1億2千万という人口は多すぎた。そして高齢者人口も多すぎた。成熟した経済大国内での資本取引では、利潤が次の投資を呼ぶ循環が起こらず、むしろ死蔵・流出へ向かい易い。

 で、アベノミクスの金融緩和政策では、企業の内部留保や株主配当の大部分が死蔵、あるいは海外へ流出する結果に至っている。それこそが『株高』なのに実体経済に恩恵をもたらさない元凶であり、財政赤字が縮小できない元凶である。本来、高学歴の学者や政治家が、これに気付かない筈がない。

 10/20(水)、NHK のニュース配信で『"年収" なぜ上がらない? 専門家に聞きました (20日15:58)』という記事が出ていた。それに対して経済の専門家(経済学部教授やマクロ経済アナリスト)は、日本では給料を上げない代わりに解雇しない…これが日本経済の成長を阻害した…という分析が紹介された。
 が、これは正社員だけの話なので嘘だ。簡単に解雇される非正規労働者の存在を無視している。しかも、株高なのにトリクルダウンが機能しなかった理由になっていない。専門家の分析は『古いデータ』を使った誤魔化しである。
 しかもだ。この専門家、しれっと嘘を付いている。日本の生産力はずっと右肩上がりを維持していた。つまり経済は、本来なら成長していた筈なのだ。それが企業の内部留保や配当金の右肩上がりとして表れている。だろ? そうでなければ、ギリシャやイタリアのように、とっくに財政危機に直面していた筈だ。

結局、政治・経済は科学的根拠よりも利害関係で動く。

 それが世界中の市民を苦しめてきた元凶である。自民党共和党も利害を重視する『資本主義政党』だった。だからこそ、コロナ禍での混乱に余計に拍車をかけた。この歪みを補正するには、絶対に『本物の民主主義』が必要だ。

 日本政府としては、国内で通貨が循環してくれないと税収を得る手段が他にないので、そのトバッチリとして貧しくなる一方の国民が消費税増税によって搾取されてきた訳。社会保障費の増大など、資本所得の『巨額の死蔵・流出』と比べたら微々たるものに過ぎない。


 総裁選の前は『交易公益資本主義』を提唱していた岸田だが、いざ組閣したら『新しい資本主義』などと言い始めた。これは怪しい。権力を手にした途端に手のひら返し…資本主義政党はいつもそうだ。一体、誰に忖度しているのか。やはり自分は、自民党は信用できないと思っている。

 10/19(tue)、衆院選公示となった。各党が『成長』とか『分配』とか、大衆を煽るスローガンを叫び始めた。だが、みんな最重要ワードを見逃している。

 今の日本経済にとっての最重要課題は、成長よりも『循環』であるアベノミクスは循環を破壊した。それが国民の多くを低所得者にした。そして、政府に巨額の税収が入らないようにしてしまった。
 そこで循環を回復させるのが『富裕税としての累進課税』である。実際にはそれだけでは不十分で、死蔵から富を取り返す『資本課税』も必要だ。

 が、そこまでやっても財政赤字の縮小は実現しないだろう。既にその数割が海外に流出していると思われるからだ。そこにグローバル経済の闇がある。そのため、今後の政府運営は債務縮小ではなく『債務対GDP比』に着目した財政運営をすれば良い。
 富裕税は『循環の正常化』のために導入する事を認識すべきだ。本気で債務縮小をするには貿易黒字を続ける必要があるが、それは外国が黙っていないだろう。日本の財政赤字は『世界(?)を救った証』と受け止めるしかないのだ。

 で、日本をそういう方向へ向かわせたのがグローバル経済である。『循環』の重要性に言及しなければ、アベノミクスを総括したとは言えない筈だが、やはりまだ、みんなビビっていて本当の事が言えないらしい。つまり…

『循環』無くして分配はなく、成長も無い。
『循環』が再分配を生み出し、それが成長に繋がる。


 ところで、こんな事を言っていると、世界ばかりが間違っているみたいになってしまうが、実は日本にも問題がある。ずっと米国という大国の傘に守られて発展してきたのは事実だからだ。
 今後は少しずつ米国や中国の影響から抜け出し、自立する必要がある。自立のための憲法改正なら賛成だが、米国に隷属する改正なら反対だ。憲法改正の議論では、それを見極める必要がある。

既に日本は自立できる HP を獲得している

 自立のためには自由貿易を見直し、国内では消費税を減税、逆に累進課税と資本取引税は増税し、意図的に外資が逃げ出すように仕向ける。事実上の金融引き締めだ。
 最初は株・円・国債のトリプル安で苦しむと思うが、実体経済はすぐに回復すると思っている。その根拠は、自分が体験した『リーマンショック』だ。

 当時の自分はドラッグストア対象の物流センターで非正規労働者として働いていたが、実体経済金融危機の影響をさほど受けていなかった。残業は確かに減ったけど。危機を騒いでいたのは、ほとんどが持ち株会社(ホールディングス)だったと記憶している。
 自分は、マスコミが騒ぎ立てたリーマンショックと現実の実体経済には、何となく乖離した違和感をずっと感じていた。が、当時の空気に流されて「そうなのかなあ…」と思いながら言い出せなかった。当時の自分は未熟で若すぎた。

 要するに、株式投資依存型ではなく、実体経済重視型の税制に改める事で、循環経済を正常化する。循環経済が軌道に乗れば、政府の税収も乗数効果で自然に増える。

 自分は以前、累進課税は『ブートストラップ・ルーチン』の役割を担うと書いた事がある。累進課税にはセーフティネットの役割があり、低所得者や中小企業の成長を促す効果があるのだ。
 金持ちから税をむしり取るだけの仕組みではない。それを理解してほしい。『取れる所から取る政策』という批判は、資本主義者の勝手な言い分だ。むしろ消費税の方がよっぽど『逃げ場を奪ってむしり取る悪税』だろう。

 資本所得で GDP を押し上げても、税収が伸びなければ『債務対GDP比』の縮小には貢献しない。それはインフレ税に頼った計算上の相対的債務縮小に過ぎず、経済成長とは無縁の政策だ。要するに『他力本願』で無責任な政策だ。

 内需重視への転換は、海外からは保護主義と文句を言われそうだが、輸出で相手国の自給率を脅かさなければ非難される筋合いはない。そもそも、欧米の保護主義とは『利己主義』に由来するものだ。
 そして、海外に対しても『持続可能社会の実現には内需産業が重要』と呼びかける必要がある。遠い国から輸入するより、地産地消で賄った方がエネルギー抑制に貢献するからだ。
 国際分業論で輸入に依存し過ぎると、将来的には『多額の炭素税』を支払う事になる。結局、自由貿易は地球に優しくない。

 さらに、日本が自立するには米軍基地も縮小させ、自力の国防へ舵を切る必要がある(米国製兵器をたくさん買わされると思うが)。ただし、爆撃機のような侵略兵器だけは持たない理性は必要だ。F35 はグレーな気もするが…

 その時こそ、初めて日本は「戦争は悪である。核兵器も悪である」とか「ミャンマー軍を非難する」とか公言する事が許される。現状では、日本が何を言っても「米国の属国のくせに…」と言われるだけだ。そうやって日本は『戦争・内戦を起こさない知恵』を出していく必要がある。

 欧米人は、そういう自立観にこだわり、彼らが考える一定のレベルに達していない相手の言うことなど聞こうともしない。それが多様性を損ねている現実に気付かないのは欠点でもある。が、世界を動かしているのは彼らのルールなので仕方がない…


 新政府には、一番最初に『内需循環型経済』へ移行するというコミットメントを出してもらいたい。それによって国内企業に下準備を急がせるためだ。できれば企業には、コミットメントに関わらずに準備を始めてほしいと思っている。それが日本人の良心だと自分は考える。

 強欲な資本主義とは距離を取り、内需循環型経済へ移行する…これは保護主義の引き籠りを意味するのではない。内需重視は『持続可能社会』を作る上で必要だし、何よりも日本が『本物の独立国』になるための試練と考えるべきだ。

 だが心配無用だ。日本は戦後75年もの間、ずっと初級ステージで HP を上げ続け、いつの間にか自立できる『Level 255』に到達しているからだ。
 江戸時代のリサイクル社会に学べば、都市鉱山に膨大な資源が眠っている事に気付ける筈だ。日本に資源が無いというのは『大量生産・大量消費の価値観』に過ぎない。
 さらに、台風・地震・火山の多い国…これらは脅威でもあるが、裏返せば資源でもある。地球の巨大エネルギーが噴き出している現場でもあるからだ。しかも海に囲まれた島国だ。これは『膨大な水資源』を持った国を意味する。

 そんな日本だからこそ、海外投資家にカモにされてきた…とも言える。搾取されても破綻しなかったんだから、立派な国になっている。大丈夫。もっと自信を持とう。今こそ発想の大転換が必要だ。今回の選挙で、それを活かして行こうぜ!

新自由主義(小さな政府)の欠点:

 なるべく政府は民間市場に介入せず、好き勝手にやらせる…それが『小さな政府』だった。が、蓋を開けてみれば誰もが『儲かる業種』に群がり、社会維持に必要な基幹産業が疎かにされてきた。

 これが格差への不満としてある。低所得者として甘んじている労働者だって、社会貢献している立派な社会の一員なのに、いつまで経っても所得が上がらない。その理由としてあるのが、国際競争を勝ち抜くには『国内に安い労働力』が必要…結局、この一点に尽きる。

 要は、国際競争激化が人件費抑制の理由になっている。先進国での格差拡大には、各国が国内で『奴隷的労働者』を増やそうとする誘因が強まっていて『生かさず殺さず飼い殺しに出来る労働力』が必要だと、投資側・経営側は考えている。

 内部留保や配当が増えていないのなら、その言い分にも納得できるが、実際にはそうなっていない。つまり、その分を人件費に充てても自由競争に支障は無い訳。
 むしろ労働分配率を高めて消費促進に繋げた方が経済循環は活発になる。という訳で、富裕層の言い分は矛盾だらけで、自身の取り分が減る事だけを心配している利己主義に過ぎない。

 国民の大半を『安い労働力』にしてしまう国際競争は市民の幸福を損なう。幸せになりたいから儲けたい。が、それが社会で共生する大勢の市民を不幸にするようでは、これは明らかに民主主義に反する。
 この悪循環を断ち切りたいなら、今すぐ強欲な資本主義とは距離を取り、自由貿易・金融緩和を改め、内需産業で循環経済を復活させるのが最善だ。これを日本が率先すると同時に、世界にも呼びかける必要がある。

 現在の需要過多、供給不足に起因する世界的物価高は、フライング・スタートで他国を出し抜きつつも、儲からない産業は敬遠してきた『新自由主義的な利己主義』が招いた当然の帰結だ。
 もしも世界が『中ぐらいの政府』を重視し、各国政府が供給不足の産業に適正に予算配分していれば、労働者だって納得できる賃金で誇りを持って働けた筈。

 そして、財政規律で国民を縛り続けたアベノミクスこそ、日本人労働者を『奴隷化』させた元凶である。しかも、世界中で似たような事が起こっている。

 今度の選挙では、これを変えるために国民は政治に圧力をかけ、世界経済を支配している大国や富裕層にも意思表示をする必要がある。そのためには、今の政権のままでは駄目だと自分は考えている。


 本来なら、選挙前に公平な視点に立って、日本の政党について簡単に説明したいと思っていた。が、次々と繰り出してくる資本主義の詭弁に反論するために、エネルギーを使い過ぎてしまった。『日本の政党』についての説明は、選挙が終わった後で、気が向いたら書く事にする。さすがに疲れた……